ぞりんばれんと 惚れ薬でジェームズがスネイプに惚れたら[10/11] 忍者ブログ

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惚れ薬でジェームズがスネイプに惚れたら[10/11]

「昨日、結局スネイプを一目も見られなかったじゃないかさ」
顔を上げないまま、ジェームズは独り言のように、しかししっかり友人たちには伝わるように言った。
「あ、え、そうだね」
ピーターはユデタマゴにマヨネーズをかけつつ頷いた。救いを求めるようにシリウスとリーマスを見たが、なぜか突然二人ともユデタマゴの殻剥きに苦戦し始めた。
「なあピーター、僕どうしたらいいんだろう」
「え、ええと、スネイプって、たぶん意外と寂しがりやなんだよね」
ジェームズは、ふんふんと頷いた。
「でも頑固だから、あまり猪突猛進に向かうのは、逆効果だと思う。だから逃げられてるんだと思う」
シリウスはなぜかスネイプではなく、レギュラスの方を見ていた。
「お互いのことを、きちんと知るために、ゆっくり話したら良いと思う」
日刊預言者新聞を運ぶフクロウたちが、一斉に大広間に飛び込んできた。シリウスは自分のフクロウに、剥いたばかりのユデタマゴを啄ませた。いつもは放っておくのに、やたら食べ物を勧めている。
「あ、でもその前に、たとえば少しだけの親切をして。敵じゃないよって知らせて、逃げられはしないようにしないと話せないね」
熱心に頷くジェームズの向かい側で、リーマスはシリウスの膝の上から、さっと封筒をとり、フクロウに渡してしまった。
「リーマス!」「なに?」
リーマスは飛び立っていったフクロウを眺めながら、涼しい顔でユデタマゴをかじった。シリウスは机に肘をついて、ゲンコツに額をのせた。

その日の放課後、ジェームズは、友人たちが寄ってたかって談話室で悪戯グッズ開発に取り組もうじゃないかと勧めるのを振り切って、一人廊下を歩いていた。あいつはいつも図書館にいるから。それと、今朝のピーターのアドバイスを頭で繰り返しながら、ジェームズは髪を撫でつけた。本を、顔が隠れるほどうず高く抱えたスネイプが、廊下の向こうから歩いてきた。
「スネイプ」
声をかけると、彼は自分の足に引っ掛かって、つんのめった。悲鳴ひとつあげずに。
「……あっぶね」
スネイプが顔をあげると、ジェームズは尻餅をついて自らをクッションにしていた。シーカーの俊敏さをフルに発揮して、しかし額に本の角をくらったジェームズは、額をさすった。それから自分に飛びついてきたような格好で固まっているスネイプの脇を両手で掴んで立たせた。『ハウツーコミュニケイト』『素敵な笑顔になるための10の魔法薬』散らばった本を集めて、三分の一をスネイプに渡し、残りは片手に抱えて、ジェームズはスネイプが進んでいた向きに顎をしゃくった。
「本を返せ」
「寮の場所知られたくないなら、ほどほどのところでそう言って。また転んだら危ない」
転んだ理由はジェームズだったから癪な上、さっき抱き止められた手前、スネイプは何も言えなかった。二人は黙ったまま廊下の幅いっぱい離れて並んで歩いた。異様な雰囲気に、周りの生徒を脅えさせながら大広間の階段まで行ったところで、スネイプがジェームズに歩み寄った。ジェームズの心臓が跳ね上がった。
「本を返せ」
さっきと同じ台詞を言われて、ジェームズは慌ててスネイプの腕の上に本を重ねた。階段をたどたどしく降りていく背中を眺めながら、ジェームズは、ローブ越しに浮いた肋骨に触れた手を、握ったり開いたりした。
「だって、あいつなんかいい匂いしたもん」
呟いたジェームズの脇を、シリウスによく似た小さな少年が通りすぎた。

レギュラスがスリザリンの談話室に入ると、またもスネイプは、定位置の隅っこで、胸に抱えた本に頭を埋めて、三角座りしていた。周囲3mは無人になっている。兄からの連絡を喜ぶ母の手紙が来た以上、律儀な彼は任務を全うせねばならない。陰湿な雰囲気をなるべく除去しなければ。
「先輩、背筋が、これ以上ないというほど丸まっていますよ」
「レギュラス……」
スネイプは顔を上げた。そこに、リリー・エバンズに修正されるような眉間のシワはない。
「シワの代わりに、顔がずいぶんユルんでますけど」
口元はポカリと小さく開いていて、目はボンヤリ宙を見ている。しかめ面じゃないから、自分は別に口出ししなくて良いのだろうか。レギュラスはスネイプの膝に目を落とした。
「あの。この本見てもいいですか」
『素直に話す勇気が出ない! 兄弟関係親子関係恋人関係友人関係にお悩みの、そんなアナタにセルフコンファンド!』きらびやかな表紙の本を、スネイプは無言で差し出した。
それからその下にあった『これでわたしもスマイリング・ビューティー!』と、小さな手鏡を取り出して、交互に眺め始めた。

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