ぞりんばれんと ママとお父さんとセブルス[3/4] 忍者ブログ

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ママとお父さんとセブルス[3/4]

少年期 お父さんとセブルス

セブルスはお父さんとはなるべく顔を合わせないようにして生きていた。
自分がいても、父母はけんかをやめない。
セブルスのことが原因で言い争うようなこともあった。
だから、夜、お父さんが家に帰ってきてからは、自分の部屋のベッドで、いないごっこをしているほうが、ずっと効率的だった。

夕方公園から戻ってくると、セブルスはこっそりママのベッドの下の木箱をあけて、積み上げられた一冊一冊の本のほこりをていねいにはらった。
その後、今日よむ教科書をえらんでリビングへ行った。
リリーがチャームのまほうについて知りたいと言っていたから。

リビングが、一番日当たりがよくて明るい。
誰もいない時間だし、西日だけど少なくとも、うすくらやみよりは、文字がよく見えた。

「セブルス」
ゆうれいのような声に、セブルスの肩ははねあがった。
セブルスはあわててもっていた本をせなかに回した。
声と同じくゆうれいのような顔をして、セブルスのお父さんは小さな食卓のいちばん日のあたらない席に腰かけ、大きなビンを片手にちびちびやっていた。

「今日は工場の機械がこしょうして、はやくに帰ったんだよ」
「そう、おかえりなさい」
セブルスは、本を体のかげになるほうの手に持って引き返そうとした。
「セブルス、おいで」
お父さんはガラガラにかすれた声で言った。
セブルスはお父さんが指さしたとおりにした。
お父さんのとなりの席につくと、セブルスのかるい体でも、いすはきしきしといたそうにないた。
お父さんはビンの中の残りを気にしていたので、セブルスは本をいすにおいて、その上に座ることができた。

「セブルス、ほら、これをのんでごらん」
お父さんは、いつものんでいる大きなビンを、そのままセブルスにさしだした。
「ねえ、お父さんはこれがすきなの?」
「あんまり」
お父さんがうなだれると、ビンの中の液体がすこしセブルスの手にたれた。
つめたくて強いにおいがした。
家のちかくの川より、ずっといやなにおいがした。

「さあ、セブルス、ぐいっといけ」
お父さんはあかるい声を出して、「イッキ、イッキ」と手をたたいた。
お父さんが大きな声で話したので、黄色い歯のすきまから、ビンからするのと同じにおいが、むわっと、なまあたたかくセブルスの顔にかかった。
そんなにいやなにおいでもないような気がしてきた。
セブルスが大きなビンに両手を両手をそえると、お父さんはビンの底をぐっとかたむけて、セブルスの口にどっと液体を流しこんだ。

さいしょ、口のはしから液体がだらだらと流れていったけれど、セブルスはこれがとてもお金のかかるものだとしっていたので、一生けんめいのみこんだ。
火をのみくだしたようだった。

「セブルス、いいぞいいぞ」
お父さんはにかにかと笑っていた。
セブルスはとうとう目をあけていられなくなって、床にひっくりかえった。
ないぞうもせなかも、体じゅううらがえったようだった。

「この本はなんだ! またずるい魔女の入れぢえだな!」
セブルスがいすからおちたので、お尻の下にかくしていた本がばれてしまったのだ。
「アイリーン! アイリーン!」
お父さんはわめきちらした。言葉にもなっていなかった。
それをたしかに聞いていたが、セブルスの意識はしずかにきえてしまった。

ばんと扉の音がして、ママのひめいが聞こえた。
「なにをしているのトビアス! セブルス? セブルス!」
いすを全部けたおして、ママがセブルスのかたわらにひざをついた。
「あああ!」
お父さんが頭をかかえてさけんだ。
よごれた髪をふりみだしながら、セブルスをよこだきにして、ママが開けたままだったドアをかけ出した。
家のよこの共同じゃぐちのホースから、セブルスの口にいきおいよく水流がつっこまれた。

「おまえが、おまえがへんな本を読ませるのがいけないんだ。
 まほうなんて、ずるだ。ひきょうだ。うそだ」
セブルスのおなかは水でぱんぱんにされた。
お父さんはずっとぶつぶつ言っていた。
「いいじゃない! それでこの子がホグワーツへいったら、くいぶちがひとり減るんだよ!
 あなたはそれでまんぞくでしょう!」
ママがかみつくようにさけんだ。
むせこんだセブルスを、お父さんは乱ぼうにうつぶせにして、むねをひざにのせて、せなかをたたいた。
セブルスがゲーゲーやっているあいだ、お父さんは、「アイリーン」「セブルス」と名前をくりかえし呼んでいた。
ママはヒステリックなたかい声で何か言っていた。
もう水まみれになりすぎていて、お父さんの目からこぼれたあたたかい水がなんだったか、セブルスにはわからずじまいだった。

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