ぞりんばれんと ママとお父さんとセブルス[1/4] 忍者ブログ

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ママとお父さんとセブルス[1/4]

幼年期 リリー

セブルスはくさい川のちかくに住んでいる。
ママと、お父さんと、三人で暮らしていて、セブルスはかみがのびほうだいで服はつねにお下がりだ。
うんと小さなころに買ってもらったジーンズ、ママのブラウス。
セブルスは恥ずかしくて、いつもお父さんのお古のジャケットでおおいかくしている。

セブルスにはだいすきなともだちがいた。
リリーはきれいな赤いかみのかわいい女の子で、セブルスが話すのをうれしそうに聞いてくれる。
リリーのお姉さんのペチュニアは、セブルスはあんまり好きではなかった。
だけどペチュニアが、スネイプの家があるスピナーズエンドは汚らしいと言う。
だからリリーと遊ぶまえには、セブルスは公園の木の下にずっと早くついていて、セブルスにはわからない、いやなにおいが消えてしまうのを待つ。
でも、今日はリリーが先に公園に来ていた。

セブルスがあらわれたのに気づいて、リリーは訊いた。
「セブルス! なにかあったの」
「ううん」
ほんとうは今朝、お父さんがおさらを割ってしまったので遅くなったのだけれど、セブルスは首をふった。

「今日はセブルスに見せたいものがあるのよ」
リリーはかわいい花柄のリュックサックの中から、ふわふわの洋服を取り出した。
「ほら、ね。これも。セブルスに似あいそうだから」
かみどめや、くつや、くしを、リリーはつぎつぎ取り出して、セブルスの服の上から、ひらひらと合わせてみた。

「でも、これ、女の子の服だよね」
「そうよ。でも、いっしょうに一回くらい、着てみましょうよ」
それなら、リリーも男の子の服を着てみればいいのに。
リリーは、セブルスの服と交換してみましょうとは、言わなかった。
セブルスは自分の服は、本当のところは男の子の服じゃないもんな、と納得した。

「それに、この青いワンピース、とってもかわいいのに、私のかみの毛の色と合わないわ」
そんなことないのに。
でも自分の、においを干し出していない服から、すぐにでも遠くはなれてしまいたかったので、セブルスはワンピースをうけとった。
けれど着がえようにも、服をぬぐのが恥ずかしくて、セブルスがもたもたしていると、リリーが言った。
「先にスカートを着てしまってから、ズボンを脱げばいいのよ」
なるほど、それなら下着は見えない。
リリーはすごいなあとセブルスは感心した。

元の服はいつもの木の根元において、すっぽりとワンピースを着てしまうとリリーは歓声をあげた。
「すごい、すごい。すてきよ」
それからリリーは、公園のじゃぐちの水をつかって、ハンカチでごしごしセブルスの顔をふき、肩までのびたぼさぼさの黒い髪をくしでなでつけてくれた。
なんだかリリーがお母さんみたい。
こっそりそう思ったセブルスのまえ髪は、ていねいにピンでとめられ、うしろ髪は、みみの下で両わきにくくられていく。

くしを水道で洗ってから、リリーはニコニコと鏡をセブルスに向けた。
セブルスが鏡をのぞいてみると、とってもかわいいとは言えないけれど、たしかに自分じゃない女の子がそこにいた。
ゆったりとひたいをかくすまえ髪と、ちょろんとしたふたつ結びのおかげで、ふんわりとやさしい表情に見える。
自分が自分ではないということは、すばらしいことに思えた。

リリーは自分の髪も手早くおなじように結んでほほえんだ。
「ほら、これでおそろいね。姉妹がふえたみたい!」
そうだたらいいのにな。セブルスはこくんとうなずいた。
きちんとアイロンのかけられたリリーのワンピースを着ているので、ふだんのように地べたに座ったりはできない。
ブランコにひかえめに腰かけて、リリーに借りた、サイズぴったりの茶色い皮のサンダルを眺めながら、ゆらゆらとからだをゆらすだけにした。
こうして動作までもがちがうと、本当にじぶんが別人になってしまったような気分がする。

「なんだかセブルス、わたしよりおしとやかだわ」
リリーはからからと笑った。
セブルスはあわてて足をがにまたに開いて、胸のところでうでをくんだ。
しかしリリーは笑いやむどころか、もっともっとおかしそうに大笑いした。
「なんでわらうの?」
セブルスがむっすりと言うと、リリーはとうとう笑いながら地面をけった。
そしてブランコにいきおいをつけて、空に自分をさしだしながら、雲にとどくぐらい明るく言った。
「だって、セブがあんまりかわいいんだもの!」
かわいいって。それはあんまりだ。だって僕は男だ。
でも。
セブルスは思った。

「その、セブっていうの、いいね!」
名前までセブルスが残らないんなら、ほんとうにエバンズの家の子になって、今までの家は忘れてしまえそうだ。
そうしたらちゃんといい子にして、なるべくペチュニアとも仲良くやっていこう。

リリーにつられてこぎはじめていたブランコを、セブルスはなるべく靴のそこをつかわないようにして止めた。
「リリー。ちょっとこの服を、借りて行っていいかな」
「もちろん!」
「ありがと」
セブルスはみじかく言って立ち上がった。
「今すぐ? どこへ?」
リリーはブランコの速度をふっとゆるめた。
「家」
けれどそれを聞いて、リリーはうつむいて小さく手をふった。

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