ぞりんばれんと ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[6/17] 忍者ブログ

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ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[6/17]

もしダーズリー家に遭遇したら

いつもは列車に乗らない、先生たちもその夏はホグワーツ急行を利用した。
授業延長の期間を利用して、夏休みに入る用意をすでに終えたらしい。
先生たちだけのコンパートメントは見るからにシュールで、コリンがいたらきっとシャッターを切っただろう。
ちょっかいを出すにはあまりにも濃い空間だったので、ハリーはいつも通りのメンバーと、いつも通りお菓子をつつくのに終始することにした。
恩師たちへのお別れはもう学校でしたから、後を引いても蛇足だろう。ただ一人を除いて。

そして、キングクロス駅の9と3/4番線プラットフォームで、ハリーはスネイプを探していた。
ゴミ箱のあたりで人波に揉まれている黒い影が見える。
「先生」
「ポ、ポッター、大鍋ケーキの包装はどう分類、うあ」
「……」
ハリーはド笑顔でスネイプの腕をかっさらうように引っ張った。ちなみにマグル服だった。
「そんなん後っす!」

改札を抜けると「ハリー!」と素ん晴らしい呼び声がした。
後ろの壁に寄りかかってタバコをふかすおじさんと、その横で例のキリンのような首をくるくる回しているおばさんもいた。
「ちょっと用を済ませてくる」
スネイプはあわててトイレへ駆け込んだ。なんか悪いものでも食べたのかな。大鍋ケーキの包装とか。
「ダドリー! どうして」
「いまいましいお前のところのクソいまいましい校長から、ゲロいまいましい手紙が届いた!」
「それをダッダーちゃんが先に読んでしまったのよ」
両親が勝手に答えてしまった。
ペチュニアが細い顎を左右に振ると、ダドリーは、ムキン、と腕を曲げて上腕二頭筋を強調した。
そりゃもう、ヴォルデモートすら一撃で伸せそうな筋肉が、ぼっこりと盛り上がっている。
「ダドリー、立派になって、こうして父の屍を踏み越えて行くのだな……」
おじさんは遠い目をしていたが、ダドリーは無視して続ける。

「おまえ、他に住むとこ、無いんじゃないのか。俺ももう収入があるからさ、うちにすむのを親父がダメって言うなら、どっかルームシェアして」
親父だってさ。
「ああ、あの、前言ってた家があるから、そこに住むんだ。ルームシェアの相手は、もう決まってるし」
ハリーが、やっとトイレから帰ってきた先生を手で紹介すると、おばさんは失神寸前だった。
「ス、ス、スネイプなの!?」
「……お久しぶりだな」
スネイプは、全くもってダーズリーたちがケチをつけられる格好をしていなかった。
真っ白でピシッとしたカッターシャツ。紺の細身の綿のジャケットに、黒いチノパンを合わせている。
デロデロしたあの肩までの黒髪は……、
「せせせせ先生髪切ったんすか!」
ハリーの知らないうちに、耳もきっちり見えるくらいに短くなっていた。
「変身術だ」
前髪も、ワンレンではなくまふっとあるので、それを耳にかけようとしてもつるつると額の上に戻った。

「どうも、ホグワーツ現校長、セブルス・スネイプだ」
かつてダンブルドアにビビらされ尽くしたダーズリーたちはコチンカチンに固まってしまった。
「ハリーがお世話になりました。いとこのダドリー・ダーズリーです」
「はじめまして。名前くらいは聞いていた、こちらこそ」
「ねえお袋、知り合いなんじゃないの」
ペチュニアは、はっとバーノンの顔を見て水を振るうように首を振った。
「いいえ!」
「君が私を覚えていたことにも驚きだった」
スネイプはペチュニアの態度に構わず言葉をついだ。

「魔法界はもう平和だ。ポッターは大人になった。心配要らない。今まで扶養してくれて、感謝している」
スネイプはしっかりと頭を下げた。
おばさんは小さな悲鳴のような声をあげて口を覆った。
バーノンおじさんはというと、顔を真っ赤にしてスネイプとペチュニアを交互に見比べている。
おばさんは、しばらく口を押さえたまま首を振っていた。
「この子を、ハリーを、今まで守ってくれてありがとう」
おばさんは上目にスネイプを切なく見るようにしながら言った。
「リリーの息子が、せめて元気に生き残ってくれて、わたしは幸せです。ハリーのことは今までずっと、」
意味をなす言葉はそこで途切れた。
おばさんは口をぎゅっと手のひらで押さえて下を向いた。
細いパンプスの足元に、水滴が落ちた。
「私も、同じ気持ちだ」
スネイプはまっすぐそれを見つめて目を閉じた。
「ちょっと待てペチュニア! ペチュニアどういうことだ! こいつは誰だ!」
「ハリーの学校の校長だって」
「そういう意味じゃないダドリー!」

ハリーたちはそんなふうにして、一家と別れた。
「ありがとうございました!」
ハリーは遠くで振り返ってくれたダーズリー一家に、大きく腰を折った。
家族だったんだ。
その時初めて気づいた。

「で、グリーモールドプレイスにはどうやって行くんだ」
スネイプは短くなっている髪を掻き上げた。
「ダーズリー家に手紙まで出してノープランですか」
ハリーがクックッと笑うと、スネイプは不愉快そうに眉根を寄せた。
「おまえが招いたんだろう」
「バスで行きます」
「バス?」
スネイプは吐き気を催したような顔をした。
「トリプルデッカーじゃありません。ダブルです」
「なんだ、マグル式で行くのか」
「バス停からちょっと歩きますからね」
「……ナイトバスよりましだ」
「それより、髪、戻りませんか、慣れなくて」
正直、正視できません。
スネイプが首を振るとサワヤカイケメン髪は、さははは、といつもの長さまで伸びた。
あ……やっぱこれはこれでダメだ……。

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