ぞりんばれんと ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[4/17] 忍者ブログ

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ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[4/17]

もしお持ち帰り予約できたら

なんとか勉強をやりくりしている日々の中、朝食の時運ばれてきた日刊預言者新聞に目を通して、ハーマイオニーが今日もため息をついた。
「だよなー。ほんとは昨日終業式のはずだったのになー」
「違うわよロン。授業延長は喜ばしい限りだわ」

ヴォルデモート勢力崩落後、預言者誌はまた偏りのない報道へシフトしていたが、だからこそ闘いの爪痕は色濃い。
そこには連日お定まりの、死喰い人残党逮捕と、残党のテロ行為を報じるニュースがせめぎあっていた。
復興ボランティア募集の欄もある。
「居残り死喰い人の攻撃で、マグルの町の住居が一戸全壊だそうよ。幸い誰もいなかったみたいだけど」
「マグルの? どこだって?」
ロンが肩を竦めながら横目で訊いた。
「スピナーズエンドよ」
え?
「それってどこだっけ」
「さあ」
ハーマイオニーも首を振った。
彼女さえ知らないなら、気のせいか。
いや。
ハリーはふとスネイプの方を見た。
教員席で、新聞を両手で掴んで見入っている。そのせいで顔が見えない。

隣にいたマクゴナガルが話しかける。
新聞を畳んだスネイプは唇を白くなるほど固く閉ざして首を振った。
そして食器をまとめて、立ち上がった。
先生たちは授業のために、いつも生徒より早めに朝食を済ませる。
勘違いかもしれない。
でも。

「二人とも授業先行ってて」
「あなたも延長授業サボりたい組だったわけ!」
「違う、すぐ行くから」
そう言ったとき、ハリーはもう走りだして、大広間から出ていくスネイプを追った。

「先生!」
大広間前の廊下で、スネイプは振り向かず立ち止まった。
「何かね」
「何かあったんですか」
「……我輩が、それを尋ねたつもりなのだがな」
スネイプの後頭部がゆるゆると左右に振られた。
「新聞で、スピナーズエンドのある住居が全壊って」
疑問を伝えきらず、誤解するのはもう嫌だった。特にこの人相手には、もう。
「……」
「それ……先生の、家じゃないですか」
「……なぜそう思う」
「か、勘ですけど」
スネイプは首だけハリーの方を向いた。
嫌みたっぷりに微笑んで。
「我輩の家は、ここだ。一度半壊したが、もう直った」
表情はそんな言葉からかけ離れた嫌な笑みだ。半分冗談のようだった。
「余計なことを気にしている暇があったら、課題に時間を割け」
廊下に生徒たちが増え始めて、スネイプは踵を鳴らして行ってしまった。


だいたい。
こうやってもじもじうじうじしているうちに人生は減速していくものらしいですねー、先生。
グリフィンドールなめんなよ。
ていうか相変わらず校長室の合言葉を『ダンブルドア』にしているのがいけないのだ。
「失礼します」
三回ノックをしても返事がなかったから、勝手に入った。
扉の正面の壁から、ダンブルドアの肖像が片目をきらりと開けた。
その真下に、玉座のような椅子に腰かけて、スネイプは書き物をしていた。

「勝手に入るな」
「お話があります」
「我輩は忙しい」
「卒業後の相談です」
「グリフィンドールの寮監はマクゴナガル先生だろう」
「この分野はあなたの方が詳しいんです」
「…………」
スネイプは呆れたように首を振って、羽ペンで机の正面の椅子を指した。

「例年なら昨日、もう学年が終わって、皆が自宅に戻っているはずでしたね」
「授業延長の決定は変わらん」
「それは、嬉しい限りなんです。
ただ、あなたも同じように自宅、スピナーズエンドに帰っているはずだった」
スネイプは羊皮紙から、目だけ上げてハリーを睨んだ。
「だから、デスイーターの狙いは、裏切り者のあなただった」
スネイプはやっと顔を上げて、口を閉じたまま、鼻からため息をついた。

「違いますか」
スネイプが閉じた口の中で歯噛みしているのが、頬の筋肉がぴくぴく動いたので分かった。
「夏休みの間も、学校に留まるつもりだ」
スネイプは目を閉じていた。
「もとより重要な蔵書は、すべてここに置いていたから、なんの問題もない」
呟くように言い切ると、また羽ペンを動かし始めた。
蔵書って。
そんな、『家』にあるものがそれだけなわけ。
僕が言うのもなんだけど。
だって育った家には。
「進路の相談ではなかったのかね」
ほとんど聞き取れないくらいの不機嫌そうな声で、スネイプは言った。
「厳密には『進路』ってわけじゃないんですけど」

ハリーはまっすぐ顔を上げた。ダンブルドアの寝たふりの口元は、さっきより心なしか微笑んでいた。
「卒業したら、シリウスの遺した家に住んで、魔法省に入って闇払いをするんです」
「だから、それならマクゴナガル教授の方が」
「進路はさておき」
「進路さて置くな」

「うちに住みませんか」
べきっ。
音源はスネイプの手元の羽ペンだ。
野次馬な歴代校長の視線が、間違いなくつむじに突き刺さっているが、ハリーは敢えて気にせず言葉をついだ。
「ずっと大勢で生活していたのに、いきなり二人暮らしになってしまうので、どうかなと」
スネイプはへし折った羽ペンの修理のために、杖を探して机の上を引っくり返している。
「クリーチャーが今は良くしてくれるんですよ。毎日ごちそうだし豪邸はぴかぴかだし」
「自分ち豪邸言うな」
書類雪崩を起こしながらも突っ込んでくれる辺り、この人相当のお人好しだ。
「家賃もとりませんし、三食昼寝つきで」
三本指をビシッと立てつつ。
「夏休みだけの別荘くらいに思ってくれればいいんですけど」
「できるかボケ!」
たしーん。
スネイプが両手で机をひっぱたく。
まだまだ物が雪崩れる雪崩れる。
「レパロ」
書類とともに机の端から落下した黒い杖を空中でキャッチしつつ、同時に折れた羽ペンを直し、ハリーは両手で差し出した。
「ついでに教え子つき。
 いかがですか」
不死鳥の杖で、自分の杖でハリーが直した羽ペンを思うさま部屋の向こうにぶん投げて、スネイプは、がなった。
「わかったから出てけっ!」
待ってました、とばかり怒鳴られるやいなやハリーはダッシュし、飛んでった羽ペンをピシリと掴む。
ハリーはドアのところで振り返って言った。
「しっつれいしましたー」


「こりゃセブルス。そんなプルプルしながら机に顔を埋めるでない」
「そうだ校長。せっかくだからブラック家を継ぎたくありませんか」
「ないっすっ!」
「こりゃセブルス。そんなにプルプルしつつもニヤニヤするでない」
「ま、せんっ!」
してんのか。
校長たちの会話、ドアの向こうに丸聞こえだった。
むしろ、ダンブルドアはたぶんわざとでかく喋ってる。
てかさ。
これ僕かなりかっこよくない?

だんだん父親に似て来つつあるのにハリーはまだ気づかず、グリフィンドール塔へ帰ってゆくのだった。

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