ぞりんばれんと ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[3/17] 忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[3/17]

もし普通に愛され先生になれたら

セブルス・スネイプが誰もいない医務室で目をさましたのは、それから三日後のことだった。
最初に指先を震わせて、黒い目を、確かに開いた。
ハリーは、傍らの椅子から思わず立ち上がった。
立ち上がったが、何も言えず、中腰のまま、結局腰を下ろした。
スネイプは口を開いた。喉に空気の通る音がして、けれど意味のある言葉を発する前に、びくんと肩を揺らした。
「蛇の牙は血管を傷つけていたけど、気管までは届いていないから、しばらく痛むかもしれないけど、喋れなくなるような後遺症は、残らないでしょう、だ、そうです」
スネイプは小さく頷いた。
首筋には包帯が巻かれ、身体には白い療養衣が着せられていた。

「重態の者は皆、聖マンゴに移送されたので、ここはガラガラなんです。あなたは、あとは意識が戻るのを待つだけだったから」
スネイプはまたひとつ頷いた。
それから目を閉じた。
「すみません、うるさいですか」
微かに首が振られる。
「もっと話して、いいですか」
首肯。心なしか大きく。
スネイプがまた目と口を開く。話そうと、訊こうと唇が動く。
「どうしよう。あれからのこと、順に話します」
ハリーは、ここで深呼吸をひとつおいた。すんなりと話すには、まだすべてがありありとしすぎている。
「ヴォルデモートは死にました」
静かな黒い瞳がぎゅっと細められた。
「どうしてそんな顔。するんですか」
スネイプは首を小さく振った。

ダンブルドアがこの人に隠していたことが多すぎたせいで、なんども振り返って説明しなければならなかった。

ヴォルデモートの不死身の秘密は、分霊箱で、それを破壊するために、グリフィンドールの剣が必要だったこと。
一歳の頃の衝突で、ハリー自身が分霊箱のようなものになっていたが、ニワトコの杖の真の所有者は実はハリーで、ヴォルデモートの攻撃を受けずにすんだこと。
「最初から杖の所有権はなかったんだから、あなた、無駄死にしかけてたんですよ」

無駄死になどという失礼な発言に、スネイプは眉をひそめた。
でも全てを知ってしまったハリーにはそれが苦笑に見えた。
思い違いでなければいいと思いながら、ハリーは微笑んだ。
「減点できますよ。今、僕は七年生として、ホグワーツに在籍しています」
スネイプは呆れたように笑った。いつものように、皮肉に、冷酷に。

「早く身体を直してください。卒業までにもう少ししかないから、先生の授業が受けたいです。みんな、待ってますから」
ハリーは骨ばった白い手に触れた。
スネイプは不審そうに首をかしげた。
みんな?
自分が待ち望まれているわけがないとしか思えないようだ。
ハリーは俯いてから肩を揺らしてくつくつと笑った。
「すいません、あなたの秘密、みんなの前で大っぴらにばらしちゃいました」
スネイプは、それはそれは険しく目を見開いた。
それからクワっと、触れてきたハリーの手に爪を立てた。

弱ってるから痛くなすぎて甘噛み程度だし?
声も出せないんだから、減点も怖くないし?
ハリーはなんだか死ぬほど笑いすぎて涙が出た。
と、油断していたら、
「痛!」
がりり。
みみず腫になった。


さて後日、平常授業再開が喜ばしすぎて、その日、生徒たちは浮き足立っていた。

戦闘の『後片付け』があらかたすんで学校外のものが帰ったあと、生徒たちは大広間に集められ、校長代理としてマクゴナガル先生が皆に話をした。
「スネイプ校長先生は、もうすぐ全快なさいます。
 そして、以前と同じように、教鞭をとってくだることになりました。
 ですから、全授業が同時に再開となります。
 一部修理作業がすんでいない教室は変更になりますから、各自寮の掲示板で確認してください」
ハリーは目一杯の笑顔でロンやハーマイオニーと顔を見合わせた。
あの先生、ずっとお見舞いに行っている僕に一言も言ってくれなかったのに!

「また今後、カリキュラムの遅れを取り戻すため、週末に補講を行うことになるので、これも各自掲示板で確認のこと」
補講のニュース。
毎日毎時間ビンズ先生の授業が続いてもいいくらい授業恋しくなっていたハリーである。
そのときはさして重大に捉えていなかった。
むしろ喜んでいた。意欲に溢れていた。それが間違いだったと気づくのに、そう時間はかからなかった。


授業の厳しさは変わらず、むしろ一年間勉学どころではなかった遅れを回復させるためと最高学年の最終総仕上げのため、ハードさを極めたが、生徒たちはかつてない熱心さで机にかじりついた。

特に、セブルス・スネイプの授業は、にやにやとする口元を手で覆いながらノートをとる者や、唐突に目頭を押さえる者が続出した。
相変わらず陰気な教室なのにも関わらず、生徒たちは完全に陽気だった。

スネイプがいくら冷酷にケチや難題を突きつけても生徒たちは、ムフ、としか言わない。
それもそのはず、デスイーターとの戦いで、皆、本物の生命の危険を知ってしまった上、目の前のスネイプ先生は、極悪を装いながら、必死こいて学校を守っていたのだ。この一年、いや、もっと昔から。
なにを言われても嫌がり度的には糠に釘な生徒たちは、威厳というか恐れられ具合失墜にもがくスネイプ先生を微笑ましく眺めていた。
が、そうこうするうちに宿題の量が三倍に膨れ上がり、ようやく冷や汗を滲ませた。
スネイプはニンマリと微笑み、わざわざハリーの方に顔を向けた。うーん、いつも通りだ……。

「特に、ポッター。それからグレンジャー、ウィーズリーはアリアドネの用途7種について、月曜までに」
「せせせ先生、それではい一週間も無く、」
ハリーは、クィレルよろしくどもった。
その宿題はいつも通りを大幅に超過してる。
ロンに至っては顎が外れたように愕然と口を開けている。
「ほぼ一年学校を無断でサボタージュしたのだ、その程度、当然ではないかね」
ハーマイオニーだけが挑戦的にうなずいて見せた。
無断。有断のサボタージュは休学だし。むしろ勇断と言って欲しい。

授業後廊下を歩く三人。
ただそれだけの感覚すら懐かしすぎた。
ハーマイオニーは大股で胸を張ってずんずん進む。
残り二人は、インフェリ状態でかろうじて後に続く。
「それで単位をくださるのだから、ありがたいくらいだわ。どう考えても出席も平常点も足りないんだから、普通なら留年よ!」
「でも他の先生は誰もそんな無茶言わない!」
「どうかしらね、マクゴナガル先生が、嬉しそうにせっせとプリントを作っていたけど」
先生方は、喜びを表す方法を一考すべきだ。

拍手

PR

ぞりんばれんと(producted by ぞり)
TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]