ぞりんばれんと ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[10/17] 忍者ブログ

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ハリーとスネイプはいっしょにくらそうよ[10/17]

もし家に二人きりだったら

その日は家に二人だった。
魔法省は休日だけど、公民館的にはお構いなしなのだった。
スネイプはTシャツにジーパンを履いて、てってけ歩いてパソコン教室を受講しに行ってしまった。

クリーチャーは人差し指をタクトのように振って、洗濯桶から中の布類を引き出している。
ハリーは壁に寄りかかって歯ブラシ片手に、それを眺めていた。
「ね、クリーチャー、先生とどう?」
「スネイプさまですか。お優しい方と思います。シリウス坊ちゃまより」
「あはは……」
洗濯物が、クリーチャーの指の一振りで乾燥され、パタパタとたたまれていく。
ハリーはサッシの溝を歯ブラシで擦り始めた。
スネイプの下着も宙を踊っているが、もう気にも止まらない。
「マスター、そのようなこと、クリーチャーが魔法で」
「うん、でも開いた歯ブラシってそのまま捨てるのもったない気がして」
クリーチャーは首をかしげた。
「いいんだよ。そんなこと、それより先生の普段のことが聞きたいな」
「レギュラス坊ちゃまの、学校にいた頃の様子を聴かせてくださいます。
 クリーチャーは坊ちゃまの小さな頃のことなどをお聞かせします」
「そっか」
ハリーはニコニコと笑った。
「楽しそうだ」
「ええ」
クリーチャーは耳をぱたぱたとはためかせた。

「けれど、昨日の夜中は顔色をお悪くして、キッチンに降りていらっしゃいました。
 クリーチャーは薄いレモンスカッシュを入れて差し上げましたが」
「大丈夫だったの? 体調でも?」
「ええ、少し寝つきがよろしくないのだと、おっしゃっていらっしゃいました」
クリーチャーはしかめ面をまねようとして眉根にしわを寄せたが、もともとしわしわのクリーチャーなので、そっくり以上だった。
「それから、お訊きになりました。守れず遠くへ行ってしまった人のことを、どう思えばいいのかと」
「どう、思えばいいの?」
ハリーの目蓋をたくさんの人たちがめぐった。
あれ? この黒い影は、
「クリーチャーは、なぜ、おうちの方々をいつまでも思い続けたいのかをつきとめました」
ハリーは首をひねった。
「努めて維持している感情には、すべて理由があります。
 どこかしらに得があります。自己陶酔や言い訳や、保身や目標のために」
「それがわかれば、かなしくないの?」
「いいえ」
クリーチャーは首をプルプルと振る。
こうもりのような大きな耳もいっしょに揺れた。

「ときどき、さびしくなることも、くるしくなることも、変わりません。
 わかっても、原因の取り除きようが無いし、そうでいいとクリーチャーは思ったのです」
クリーチャーはぴんと胸を張った。
「でも、クリーチャーはそれで、とても心持ちがまっすぐになったのです」
「クリーチャーにとってそれは何だったの?」
クリーチャーはぴんと白いタオルを振りさばいた。
「内緒です」
彼ははにかんで笑い、手を背中で組んで、大事な思いを胸のなかで転がすように、体を揺らした。
強く追求すれば答えただろうが、ハリーもにっこりと静かに笑う。
「それから、クリーチャーは子守唄を歌って差し上げました。
 スネイプさまは感激されて、悶絶していらっしゃいました」
と、クリーチャーはウシガエルのような声で自慢げに言った。

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